美紗っぺとよむ晶子の歌
@  金色のちひさき鳥のかたちして銀杏ちるなり夕日の岡に
A  ああ皐月仏蘭西の野は火の色すも君も雛罌粟われも雛罌粟
B  夏のかぜ山よりきたり三百の牧の若馬耳吹かれけり
C  清水へ祇園をよぎる桜月夜今宵逢ふ人みなうつくしき
D  なんとなく君に待たるるここちして出でし花野の夕月夜かな
E  海恋し潮の遠鳴りかぞへては少女となりし父母の家
F  青空のもとに楓のひろがりて君亡き夏の初まれるかな
G  狂ひの子われに焔の翅かろき百三十里あわただしの旅
H  絵日傘をかなたの岸の草になげわたる小川よ春の水ぬるき
I  啄木が嘘を言ふ時春かぜに吹かるゝ如くおもひしもわれ
J  君こひし寝てもさめてもくろ髪を梳きても筆の柄をながめても
K  くれなゐの杯に入りあな恋し嬉しなど云ふ細き麦わら
L  沙羅双樹しろき花ちる夕風に人の子おもふ凡下のこころ
M  椿ただくづれて落ちん一瞬をよろこびとして枝に動かず
N  その子はたち櫛にながるる黒髪のおごりの春のうつくしきかな
  木の間なる染井吉野の白ほどのはかなき命抱く春かな
O  背とわれと死にたる人三人して甕の中に封じつること
P  むらさきも青も重なる山を負ひ海に向ひて散るさくらか
Q  おどけたる一寸法師舞ひいでよ秋の夕のてのひらの上
R  ついと去りついと近づく赤とんぼ憎き男の赤とんぼかな
S  後ろより蔵塗りながら物云ひし叔父など見ゆるみそはぎの花