与謝野鉄幹という歌人の世評は甚だかんばしくありません。歌よりももっぱらその人物評の評判が良くありません。
ざっと羅列するとこんな感じでしょうか。
女ぐせが悪い。晶子という妻がありながら山川登美子や増田雅子という女性に恋慕する。若い時は閔姫(みんぴ)襲撃事件に関与したとして取り調べを受ける。また当時の歌も選ばれた人間のように思い上がった感じがする。「明星」の最後の頃は一緒にやってきた仲間に見切りをつけられる。「明星」廃刊後は晶子に食べさせてもらい甲斐性のないところ甚だしく、啄木から「老いた詩人」などと揶揄される。 晶子の献身的な費用捻出で渡欧させてもらうが、その後パッとしない。京都府から選挙に出馬するも見事なぐらい落選する。
どう見ても、不甲斐ない男性像しか浮かんでこず、彼のイメージは身勝手な髪結いの亭主像から一歩も抜け出ていません。
実は私自身も、鉄幹を知るまでそのようなイメージを持ち、どうも馴染めない男だなという思いを抱いていました。もっと言うなら「だめ男鉄幹」ぐらいに思っていました。そしてその分だけ、晶子の献身的なイメージが増幅されていたのです。
しかし彼の歌を読み、その史実を知っていく過程の中で、冒頭で述べたことが、大きく歪曲されて伝えられていることを知ります。とにかく誤解されやすい人生を歩み、かつその誤解を解くことに無頓着な男でした。
どんな人生を歩もうが文人はその作品が良くてなんぼのものですから、彼の作品を読みながら、同時に悪いイメージ払拭しようと大それたことを考えています。果たしてどこまで、筆が及びますやら、甚だ心細い船出ではありますが宜しくお付き合い戴ければ嬉しく思います。
2005年1月5日 ホームズ